ファルシータ・フォーセット。
 彼女の辿ってきた道。その過程で、土にまみれ、確かに翼は汚れた。しかしその翼は、
わずかなりともその力を失ってはいなかった。

「綺麗な言葉ね」
「言ってませんでしたね。俺は、詩人になりたかったんですよ」

 彼女が、ふっと視線を外して囁く。

「なら、なぜ詩人にならなかったの?」
「……アルティエーレ家。俺の名前が、それを許さなかったんです」
「そう……。そういうこともあるんですね」

 彼女は立ち上がり、軽く首を横に振った。

「ごめんなさい。今日は……少し疲れていて……」
「あ、いえ……俺の方こそ、遅くまですみません」

 残念、だとは思わなかった。
 もしファルさんとあのまま関係をもってしまったら……その方が後悔をしただろう。
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